私の弟は不登校だった。
不登校というと何か事情があるのではという人がいるが、学校に行っていないというだけでそれ以外はどこにでもいそうな少年だったはずだ。
弟が不登校であることに関して、当時の自分は弟が学校に行けないことに関して、社会的に後ろめたいんだろうなと思いながらも、それで全てが終わる訳ではないし、行けないなら行けないでしゃーないでないのといった認識をしていた。
だから、弟が不登校であることに関して、恥づかしい、恥づべきことだと思ったことはない。そういったことを突きつけられるシチュエーションもあったような気もするが、考えとしては変わっていない。
弟が不登校であった。ただそれだけなのである。
ただ、そんな経験があったことで思わず手に取った本がある。
タイトルは「ひきこもりの弟だった」
作中ではひきこもりである兄と主人公であるその弟が描かれていく。ちなみに、私の場合は弟に関して不登校だったのであって、ひきこもりであったとは思っていないことを述べておく。
背表紙に書かれたあらすじはこんなかんじ。
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『質問が三つあります。彼女はいますか? 煙草は吸いますか? 最後に、あなたは――』
突然、見知らぬ女にそう問いかけられた雪の日。僕はその女――大野千草と“夫婦”になった。互いについて何も知らない僕らを結ぶのは【三つ目の質問】だけ。
まるで白昼夢のような千草との生活は、僕に過ぎ去った日々を追憶させていく――大嫌いな母、唯一心を許せた親友、そして僕の人生を壊した“ひきこもり”の兄と過ごした、あの日々を。
これは誰も愛せなくなった僕が、君と出会って愛を知る物語だ。
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最後の20ページ、どうかこの物語が終わらないでと心の底から思った。
読了後、爽快感は微塵もなかった。
普段は考えることはなくとも、確かにそこにある黒々としたものを突きつけられたようで。
というか読み終わって気が落ちた。
普通に凹んだ。
読み終わった次の日、職場にて
「なんか元気なくない?」と言われ、
「昨日読んだ本がよかったのだけれど何故かそのせいで元気出ないです。」
と言っても訳わかんないよなーと思い苦笑いするだけに留まるくらいには気が落ちた。
それでも、読んで何より久しぶりに書店で手にとったのがこの本でよかったと心の底から思った。
こんなにも、読了後の気持ちがモヤモヤとして。
こんなにも、この本を手に取ってよかった思える本を私は知らない。
この本はどんな本ですかと問われたなら、あらすじを伝えるより(上に載せてしまったが)帯に書いてある一文見てもらう方がいいだろう。
この本を読んで何も感じなかったとしたら
それはある意味で
とても幸せなことだと思う。
読んだ人にしか味わえないその一文は
全ての人の共感を呼ぶ訳ではないけれど
刺さる人には深く刺さるこの本を適切に表現しているとはずだ。
万人には、決してオススメできないけれど
今年読んで1番深く突き刺さった本。
ひきこもりの弟だった。