学生の頃「私はこんな生き方をしたいんだ」と目を輝かせ語る人に心の底から尊敬していた。
講演会や飲み会の席にて、将来のことや生き方について語る肩書きがある人や先輩の話を目をキラキラさせながら聞いていたと思う。
なんなら、プロフェッショナルを見ては感化され、情熱大陸を見て感動し、自己啓発本を読んでは感心していた。何事にも感化されやすい学生だったのだ。
2年経った今、
情熱大陸を見ても鼻をほじりながら
「へー、スゴイネ。」と棒読みすることしかできない目の濁った社会人になってしまったが、そんな私の濁った目を潤ませてくれる一冊があった。
『星野、目をつぶって。』
週間少年マガジン、連載中の作品。
バリバリ陰キャラの「持っていない側」である主人公である少年、小早川が、クラスのカーストの上位グループの人気者「持っている側」の少女、星野のある秘密を知ってしまうことから始まる物語である。
「ああ、よくある奴ね」
私の拙いあらすじを見て、そう思った人もいるかもしれない。
...その通りである。
少年誌にありがちなご都合主義な展開と設定。
主人公は陰キャラで、ヒロインは人気者のラブコメ。
上っ面だけを見ればこの漫画は「よくある奴」止まりなのである。ただ、この漫画では「よくある奴」では決して描かれることのない、ほろ苦さ、もどかしさ、その他言葉にし難い黒々とした感情が描かれている。
この漫画では、登場人物が「こんな生き方をしたい」と熱く語るシーンは存在しない。
いじめられている美術部員も、いじめているギャルも、クラスの人気者も、クラスの日陰者も、皆が「こんな生き方しかできない」と思い、立ち止まり、葛藤する。
その姿はとても人間らしく、魅力に溢れている。
3月のライオンを読んでいても同じ感覚に陥ったが、「こんな生き方しかできない」と思い、立ち止まり、葛藤し、歩を進める姿は大きな共感を呼ぶ力があると思う。
この漫画読んでいると
あの時の「もしも」は存在し得ないからこそ
笑える瞬間がこの先あってほしいと願わざるを得ない。
そんな、「こんな生き方しかできない人々」の漫画『星野、目をつぶって。』オススメである。
⇩星野、目をつぶって。が良かったら、次は志乃ちゃんは自分の名前が言えない。
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